馬インフルエンザは伝染病のなかでも、集団で飼養されている競走馬にとって最も大きな被害を与える可能性があることから、現役の競走馬を中心にワクチン接種による徹底した予防対策が実施されています。軽種馬の一般的なワクチン接種方法は、まず育成期に基礎免疫 (2週-2ヵ月間隔で2回接種)を行い、その後半年に1回ずつ春と秋に補強接種が実施されています。この馬インフルエンザの予防接種は、競走馬では厳密に守られており、もし接種方法に不備があれば国内移動はもちろん海外遠征にも支障をきたすことがあります。現在、わが国で使用されている馬インフルエンザのワクチンは、ウイルスをホルマリンで処理した不活化ワクチンです。このワクチンは血液中に中和抗体の産生を促し、ある一定のレベル以上の中和抗体価を獲得すれば発病を阻止するか、激しい症状を軽度に抑えることが知られています。しかしながら、ワクチン接種による抗体持続期間が短いため、半年に1回以上接種することが推奨されています。一方、ヨーロッパやアメリカで流行している馬インフルエンザウイルスは、それぞれ独自に少しずつ変異していることが明かにされています。このように人のインフルエンザウイルスと同様に、馬のインフルエンザウイルスも大なり小なり変化します。そのため、現在わが国で市販されている馬用ワクチンには3種類のタイプの異なるウイルス株が含まれていますが、今後とも世界各地の流行時に分離されたウイルスの性状を解析し、時代に即応したワクチン株を選択していく必要があります。
馬インフルエンザにかかった馬を治療するにあたっては、二次感染を防止することと体力を維持するための対症療法が中心となっています。人の医療分野においては、インフルエンザウイルスに対する直接的な治療薬としてアマンタジン(ノバルティスファーマ社)が1999/2000年のインフルエンザ・シーズンから使用されるようになりましたが、耐性ウイルスの出現および小児における神経興奮という副作用が問題となっています。一方2001年2月よりリレンザ (グラクソスミスクライン社:ザナミビルと一般的に呼ばれている)およびオセルタナビル(ロッシュ社)の販売が許可になりました。この2剤は、副作用も少なく耐性ウイルスも出現しにくいことが知られています。今後、輸入検疫における病馬の早期摘発やワクチン接種による予防対策を講じた上で、第3の防御壁として万一の発生や新型ウイルスの発生に対処するために、抗ウイルス剤の馬への応用について検討しておく必要があると思われます。
(感染症シリーズ -馬インフルエンザ-より引用)
2007年08月12日
馬インフルエンザの予防と治療法
ニックネーム ウマ at 21:16| 馬インフルエンザ
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